倉橋 圭 1stアルバム「Focus」インタビュー

倉橋 圭さんに1stアルバム『Focus」についてお話を伺ってきました。

Kei Kurahashi Q&A /『Focus』


Q1 アルバム制作お疲れさまでした。アルバムをリリースした今の気分は?


非常に満足しています。制作中1stアルバムということで必要以上に肩に力が入って、思うように作業が進まない時期もありました。でも自分の出したい音、というか欲してる音に対して素直に音を創っていくと自ずと何かしら一つの方向性のようなものが見えてきて、このアルバムの中でやりたい事は全部詰め込めました。


Q2 アルバムを作る上でこだわったこと、コンセプトなどを教えて下さい。


「こだわり」とも「コンセプト」ともとれると思いますが、まず「今までの自分の音楽経験の中で吸収したものを全て出す」ということでした。ジャンルを固定して一つのアルバムを作ることも面白いのですが、今の僕の心境としてはジャンルを固定される事が無駄な制約になって欲求不満な状態で終わってしまう。そもそも音楽をジャンル分けする事自体が嫌いですし(笑)


あと具体音をふんだんに入れる事。元々ノイズ好きで、高校生の時から街中の雑踏なんかを録音してサンプルとして使っていたんですが、今も外出するときは必ずポータブルレコーダーを持って何か面白い音があったらすぐに録音するんです。高校生の時はショボいマイクでMDに録音してたんですが。最近は24bit/96kHzで録れるレコーダーまであるので重宝しています。録音した音素材でよく使うものは日常生活で聞こえる音は何でも。工事現場の音だったり、ちょっと天井の高いレストランの音だったりと様々なんですが、例えばアルバムのタイトル曲の「Focus」では新宿の大ガード下で録った電車の「ダダン」って音をパーカッション素材として使っています。最終的に使われなかったけどヤケに冷却ファンの音がうるさいコンピュータのふたをわざわざ外して更にうるさくして録ったりもしました(笑)


Q3 インストゥルメンタル(器楽曲)が多い中で、ボーカル曲「Focus」と
  「明 -aka-」が印象的でした。これらの曲の位置づけは?


元々「Focus」のスケッチを2年くらい前に作っていたのですが、それ以降全く手を付けずにいたところ、ボーカルを担当して下さったshueさんの歌を彼女のサイトで聴いて「これだ!!」と思ってすぐにお願いをして歌っていただきました。「Focus」は僕の意向で歌詞の無いトラックとなりましたが、その後shueさんの歌で、今度は歌詞のあるボーカル曲を創りたいと思い、ご本人にお話をしたところ快諾していただき、それが「明 -aka-」につながりました。shueさんには作詞もお願いしましたが、歌詞に関しては8時間くらいディスカッションをしたんです。余談ですが7曲目の「Fotografia」はそのディスカッションの時に録音した音を素材にしてコラージュした曲です。


Q4 ゲストミュージシャンについてお伺いしたいのですが。


shueさんは先ほどお話しした通りアルバムの中でも特別な役割を果たして下さっています。
「Connection」と「Style」でGuitarを弾いて下さったcarlos miuraさんは僕が彼のギタープレイに惚れ込んで演奏をお願いしました。何回も彼のライヴを聴きに行きました。レコーディングで僕が思っていた以上の音やグルーヴを聴いてゾクゾクしたことは今でも鮮明に記憶してます(ワウのカッティング、メッチャかっこよかったなぁ)。


「Style」では以前一緒に音楽活動をしていた浅川智史くんにアレンジなどで参加してもらいました。智史くんから教えられる事は本当に多い。お互い主たる方向性が真逆なはずなのに共感できたり尊敬できたりすることだらけ!生涯の友になると思います。


同じく「Style」でSaxophoneを演奏して下さってる荒木真さんですが、5~6年前から何度かライヴやレコーディングでご一緒させていただいておりました。Jazz要素の強い演奏をお願いしましたが、ご本人はラベルやドビュッシーをこよなく愛していて近現代の音楽をよくご存知なので非常に親近感を覚えました。


「Reverie」「Focus」「Verwandlung」の3曲でGuitarを弾いてもらっている田窪一盛くんですが、彼はエフェクターを駆使してギターで奏でる音の多様性を常に追求しているんですね。「ギターでそんな音出せちゃうの!?」っていうくらい面白い試みをしているので一緒に音楽をやっていてよい刺激をもらっています。今ゆる~いペースで二人でトラックの共同制作をしております。


「Focus」で西山隆行くんにアコギを弾いてもらってます。「2調節くらいでいいからDの音でカッティングして!」ってお願いしたら1時間後に録音したデータを送ってくれてループで使わせてもらいました。
仕事早っ!感謝してます。


Q5 今後のコンサート予定、これからやってみたい事を聞かせて下さい。


まずは故郷である札幌で秋にコンサートをやる予定です。東京では札幌とは別なコンセプトでパフォーマンスをしたいと思ってますが時期は未定です(笑)これからやってみたい事に関しては、コンサート以外では先ほどお話しした田窪くんとの音ファイルの交換でトラックを創ったりとか、ネット上でUSTやTwitterを使ったリアルタイムなソーシャルメディアを活用したアーティスト活動。


あと最近ハードウェアに対しての欲求がすごく高くなってきているのでスペースさえあればアナログシンセとかエレキギターとか欲しいです(笑)プラグインは便利だし僕の音楽制作で中心となり、手放せないものなんですけど、そればっかり追っかけることって音楽を創作する上であんまり健全な行為ではないんですよね。手間ひまかかってでも自分の出したい音があるんだったら、例えばクローゼットの奥底にしまってあるハードウェアなんかを引っ張りだしてでも使うべきなんですよ。
「便利」が創作において「怠惰」を誘発するのは簡単に起こりうることなので、常に自分の発信したい音に対しては妥協せずにとことん試行錯誤したいです。




倉橋さん、どうもありがとうございました。   < Interviewer : staff ym >